改めて。お世話になっていた鍼治療の山口先生が亡くなった。
2020年の11月5日、LINEの履歴で「カメラ持参でお願い出来ますでしょうか。」とある。
喋り言葉はフランクだが、文面はかっちりしているのが先生らしい。
2020年の11月6日。
到着後に話を聞いたら、癌になったので遺影の写真を撮ってくれとのこと。
進行が早いので、生きるために抗がん剤治療を始めるそうだ。
あまりのことに頭が真っ白になったが、笑って雑談しながら写真を撮るしかなかった。
当時、仕事をやめることを決めて、先もよくわからず、半ば這いつくばるように生きていたのを覚えていて、てらいのない言葉で「生きるために」と言っている人が眩しかったのを思い出した。
「ああ、そうだった、俺は元気なんだから生きなきゃなぁ」と。
新小岩駅に向かう途中で、自然に口をついたその言葉で、この一年を生かしてもらったんだった。
丸々一年後、2021年の11月6日、友人から先生の訃報連絡が届いた。
こんなところまでかっちりしなくてもいいんだよ。
息子さんに連絡を取って、せっかく撮った遺影の写真を受け取っていないことを聞く。
おいおい、無駄になっちゃったじゃないか。
多分まだまだ生きるつもりだったんだな。
準備万端に見えて、へんなとこでぬけてやがるな先生。
呑みかけのフランソワ・ギーは神酒さんと飲んじゃったよ。
悔しかったら取りにおいで。
そっちに行くときは個人輸入して、2,3本抱えて持ってくようにする。
またね、先生。
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